Photoshopグレースケール・印刷向けのグレースケール画像のつくりかた・印刷について編

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Photoshopグレースケール・印刷向けのグレースケール画像のつくりかた・印刷について編Photoshop・これからのグレースケール画像のつくりかた | やもめもの続きです。

モノクロ画像補正に関わる印刷のはなし

やっぱり印刷されるものなので、ここは外せません…めんどくさい文章が続きますがおつきあいくださいマセ。囲み部分と小さい文字部は細かいことなんで読み飛ばしても結構です。

濃くなる要因のひとつ、ドットゲイン

ドットゲイン…指定した網%に対して、紙上でどの程度データ≒CTP版、フィルムに対し太って「見える」か。

オフセット印刷では、インキの受け渡しをする際にどうしても押しつけ合わなければいけません。版からブランケットへのインキの受け渡し、ブランケットから紙(圧胴)への受け渡しでインキは潰れ広がります。ちなみに最も広がるのは版—ブランケット間です。これを物理的(機械的)ドットゲインと言います。

(※版—ブランケット間は、胴仕立で相当変わります。ブランケット—圧胴間はほぼ用紙の種類によって決まります)

もう一つ。印刷用紙は光が透けて見えますね。透けない紙でも、用紙の内部までは光が入り込みます。印刷された網点自体やその周辺から光が回り込み、網点の色を拾って表に反射して出てきます。この時実際の網点の大きさよりも大きく、濃く見えます。これが光学的ドットゲイン。網%にもよりますが物理<光学です。これはルーペで覗くと逆に分からなくなります。

これは無くすことはできませんし、無くなると困るものでもあります。必要悪、というよりオフセット印刷の特性です。印刷が下手だから太る、というわけでもありません(下手だと必要以上に太ったあげく濃度が薄くなったり、網の形が大きく崩れたりしますが、ルーペで覗けばすぐ分かりますし今は酷いのはあまり見かけなくなりました)

さらに詳しくはこちら、[9017][用語]【ドットゲイン】【Dot Gain】 | DTP・印刷用語集 または検索を。

だいたいこんな感じのカーブになり、中間調が濃くなってきます。(CTP、175線スクエアの場合…ちょー適当ですが)

dotgain_curve

ドットゲイン15%、というと普通は50%近辺の最大値を指します。15%はオフセット175線コート紙に対して正常な数値です。

(※ちなみにJapan Color標準印刷認証ではドットゲイン値は14%±3%とされています(コートの場合))

これが印刷条件で変動しまくります。

その一つ、印刷用紙による違いを。

コート紙に刷った網…同じデータを、
20130221_204002165
上質紙で刷るとこうなりました。
20130221_204009172
大きさ違いますね。濃度も違います。

(これは拡大しているため分かりませんが、光学的ドットゲインが効くため離れて見るともすこし濃い印象です)

中間調により影響が出るため、トーンカーブで中間調を暗くしたようになっていきます。

どれくらい変わるかを一例でお見せします。

このようなデータを作りました。左:ドットゲイン15%で作成、右は30%です。(作成時Photoshopでは30%でも15%でもカラーマネジメントが効いていて見た目は変わりません)

↓二つをつなげたデータです。これを印刷します。210線カラー混在(プロセス墨)オフセット印刷です。

grayimg_1

↓コート紙に刷ったものを撮りました。ほぼ作成時の意図通りに再現できています。このコート紙では(また、この印刷機・線数等の印刷条件では)ドットゲイン15%設定で問題無いことがわかりました。

grayimg_2

↓同じデータを上質紙に刷ったものです。15%のデータでは着物の皺が全く再現できていませんが、30%設定のデータでは違いが分かります。この用紙・印刷機(印刷条件)では、ドットゲイン設定は25%から30%は無ければ苦しいことが分かりました。

(線数が210線と少し高いため、ドットゲインの影響は175線よりも強く出ます。インキが潰されて広がる幅はどの線数でも一定なので、より線数の低い方がドットゲインの影響は少なくなります)

grayimg_3

ドットゲイン設定はカラープロファイルの設定同様、印刷条件に合わせて設定したほうが良い、ということがわかります。

(…この設定を固定し、経験で用紙に合わせた補正をすることも運用上はありえますが、せっかく用意されているのですから使わない手はないでしょう。)

15%でも30%でもPhotoshop上で見た目は変わりませんから、変換先を意識せずある程度見た目を作り込むことができます。

ただし、当然ですがドットゲイン設定ではシャドウ、ハイライトの設定は行われません。例えばJapan Color 2001 Coatedをカラー画像に適用すると、自動的に総インキ量が350%以下に抑えられますが、ドットゲイン設定ではRGBブラックは常に100%ベタになります。これは補正する必要があります。後に説明します。

どんな用紙に刷るのか全く分からない場合もあるでしょう…どうしても分からないときは、15%設定にてハイライト中心に作り込む、変換前提でRGBのまま渡す等々逃げ道は…あることはあります。ですが、もし印刷会社の中で変換しているなら作業者へ用紙の、最低でも塗工紙・非塗工紙かの情報と刷られたものをフィードバックする…これだけでもずいぶん変わると思うのです。

コントラストが弱まる原因、濃度レンジ

上の画像でも分かりますが、上質紙等に刷る場合最大濃度が落ちてきます。

アート紙の90%網

アート

上質紙の90%網

上質

単純にベタの濃さが違います。

レンジ

1がアート紙での0〜100%の濃度範囲とすると、上質紙などは0〜100%を指定しても2の濃度範囲しか得られず、この狭い領域で勝負しなければなりません。

つまり視覚的に、濃度差が感じられにくくなるため、よりコントラストを意識してつけてやる必要が出てきます。そして、画像によってコントラストを付けるべきところがハイライト側か、中間か、シャドウ側かは変わるため一点一点、本来は補正すべきです。

紙白の白さ、ベタの黒さは環境光でかなり変動します。特に紙の白は、太陽光下と色調評価用蛍光灯下では紫外線の量の違いにより、用紙中の蛍光物質の有無で異なる光源下では白さがまるで変わって見えることがあります

補正が難しくなるもう一つの要因、網の荒れ

先の網点拡大画像、気づきましたでしょうか。網の形がバラバラだったのを…

わかりやすくもっと拡大してみましょう(100倍に拡大)

IMG_2926

これは上質紙に刷られたものです。この網点は本来丸いのですが、紙の繊維の凸凹に沿ってランダムに歪み、各点の大きさが変わっています。つまり網%が点毎に変わっています。ちなみに、この印刷はわりときれいな部類に入ります。

すると全体にノイズをかけたようになり、濃度レンジが圧縮されることと相まって、さらに濃度差がわかりにくくなります。

先ほどの着物写真の一部で見てみます。

↓元データの着物のしわ部分。しわの山(70%〜)と谷では10%近い濃度差があり、コート紙に刷ったものではこの通りに再現されています。

obi1

↓上質紙ではぼんやりとして、「言われれば分かる」程度になってしまっています。

(画像ではわかりにくいのですが、網点がベタにまで潰れている箇所はありません。網の目はあいています)

obi2

もしこの着物部分の濃淡が大事なのであれば、よりコントラストをつける必要がある、ということです。

上質紙の例を出しましたが、この荒れは上質でなくても起きます。

ユポ

90%網部の拡大です。ベタ濃度はコートとあまり変わりませんが、網の抜けが不規則に埋まっているのが分かります。

これはユポに刷ったものです。通常の水ありのオフセット印刷では、インキと水のバランスが崩れるとすぐに網が荒れたり、最大濃度が下がったりします。ユポは水を吸わない紙なので非常にバランスを取りづらい、つまり刷りづらく網の荒れやすい紙です。上質紙以外でも、紙によって、また印刷が原因での荒れが起きます。

正常なドットゲインと、用紙表面形状や印刷の不具合等の外乱で起きる網点形状の崩れを「荒れ」として分けておきました。実際これらは対処方法が違うため、トラブル時には分けて考えます。

シャドウ・ハイライトそれぞれの設定

どう設定すればいいかを考えてみましょう。

シャドウ側

写真画像では、最も暗いところを100%ベタに設定せず、網点が潰れる少し手前を最大濃度とします。

ベタが階調に入り込むと唐突な感があり、かなり違和感のある仕上がりになるからです。

スキャン

またベタ部〜潰れる最大%までの2%〜10%程度の階調レンジを捨てそれ以外の98〜90%で階調表現することで、不安定な要素を排除できます。階調があっても潰れてしまったら意味がありませんよね。

これはコート、上質問わず上手く使えそうな時でなければ、避けた方がいいでしょう。

網点が潰れる限界は、グラデーションの刷り物などをルーペで観察して確認してください。扱った仕事のデータと刷り上がりを比較しておきましょう。

コートなら98%程度を最大濃度とし、上質では90%程度にするのがこのサンプルでは適当なようでした。もちろんこの数値はこのサンプルに限った話で、用紙や印刷方式(特に線数、版材…ダイレクト版など)、印刷技量で変わります。

(今回210線という少しだけ高めの線数なので、限界値が少し低いのです。133線、150線なら上質でも+5はいけるだろうと思います)

レンジ2

1がコートの濃度レンジ、2が上質の0〜100%の濃度レンジとすると、最大網%を絞るために濃度域はさらに狭くなることになります。

ハイライト側

ハイライト側は、用紙表面の凸凹に対し網点自体が小さくなるために、

IMG_2926

先ほどの「荒れ」の影響が強く出てきます。

コートではっきり刷られている5%網点が、

ハイライト4

ハイライト1

上質紙では用紙表面の影響を強く受けがさがさになっていきます。

ハイライト3

ハイライト2

光学的ドットゲインの影響もあるので、離れて見るとそれなりに出ているように見えます。

(実際にはCTP版オフセット印刷では、上質・中質であっても、3%程度の網点は印刷されて出てきます。全く消えてしまうことはほとんどありません。よっぽど悪い紙でない限り、CTPオフで3%が消える印刷は相当まずいと思います)

しかし、出るとは言え小さい網点を使うハイライト側はより荒れて見えやすいために、上質などでは濃淡の表現がし辛いことが分かります。

これらを踏まえて

上質や印刷向けにどうモノクロ補正をするかを、また長くなったので次の記事で。

…印刷物の網が潰れている、荒れている、等の印刷結果をしっかり見るためには、ルーペが必要です。

網点の観察に最適かつ手持ちで気軽に見られる倍率は25倍〜50倍、まずは25倍、また観察対象が自分の影で暗くなりにくいペン型をお勧めしています。


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2件のフィードバック

  1. 2013/02/25

    […] 長くなったので次で… Photoshopグレースケール・印刷向けのグレースケール画像のつくりかた・印刷について編 […]

  2. 2013/04/06

    […] 基本、グレー変換のカーブを、各種ドットゲイン値で比較してみます。 前回の「印刷について編」のおさらいです。 つらつらと図を見てみましょう。どれくらい設定で違うのかを比較し […]

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